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レインポンチョ最強!
梅雨を前に前から欲しかったレインポンチョを購入。

これは最強や!

自転車のカゴまでカバーできるから、手も足も濡れない、
リュックの上から着れるので、カバンも中身も濡れない。

これまで雨の日は傘をさして歩いてたけど、それより断然濡れない。
特に足元が快適。そして速く着く、

あと、ツーピースの合羽だと、駅前&人前でズボンを脱がないといけないんだけど、
あれってちょっと不格好ですやん?
ポンチョだと羽織ってるだけなので、サラりと脱いで終わり。

ただ、ツバが大きめのものを買ったんだけど
それでも顔は少し濡れる。
傘と比べてどうかと言われると微妙なところだけど、
この点は少し課題かな。



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連続小説『水愛』第三話〜右腕〜
水愛 003 右腕

<これまでのあらすじ>
 大手水産会社の社内ベンチャー企画から、水産会社発症の地での地域密着型ビジネスを展開する会社・水愛(スイート)を立ち上げた佐々幸太郎は、東日本大震災当時の飲料水不足の体験からボトル水販売業に目を付けていた。県境にある採水業者・KNTの本社兼工場を訪問した彼は、年間契約の最小ロット数の多さに打ちひしがれていたが、単価の安さと品質の高さから前進を決意し、親会社の水産会社の力を借りるべく根回しを始めた。



 2013年の師走、軽い身のこなしで幸太郎の社長室を訪れた男がいた。水産の広報部員の岡部浩志だ。瀬戸内とはいえかなり寒いにも関わらず、浩志は春物のような薄手のトレンチコート1枚という出で立ちだ。

幸太郎も最近は機動性重視でロングのスリムダウンコートを愛用していたが、浩志の軽やかさには負ける。



浩志は幸太郎と5歳離れているうえ、一度も同じ職場になったことは無いが、かつて労働組合にて兄弟のように共に活動していた。彼らの水産会社では課長未満の職位の者は全員が組合員であることを義務付けており、若手の教育や社交の場という側面もあった。




「社長室といってもショボいもんだろ?珈琲も俺が入れたものだ。不味かったらすまん。」
よほど古いタイプ且つ重要な顧客でない限り、案件に関係のない女性従業員にお茶汲みをさせることを控えていた。それが水愛のスタイルだ。



幸太郎は遠慮なく社長室を隅々まで観察している浩志の様子を微笑みながら眺めていた。
「うちの組合事務所が小奇麗になった感じですね。なんだか懐かしいですよ。」
相変わらずの様子にお互い表情が明るくなってきた。

「早速で悪いけど、要件に入っていいか?ああ、うちの業容の説明を先にしないとな。」
幸太郎は浩志に水愛設立の趣旨とこれまでの歩み、業態、陣容や規模を一通り説明した。もっともだいたいは浩志も承知している内容ではあった。



次に本題の金田の水の販売について語り始め、浩志を呼んだ意図を説明した。幸太郎は膨大な数のボトル水の販路確保のアイディアや、将来これに関するビジネスを任せられる人材を引き入れたいと考えていた。そこで浩志を借りるべく水産に依頼したと。

「いいんですか、僕なんかで。ご存知かもしれませんが最近沈んでるんですよ。」
幸太郎が水産に居た頃は浩志は営業部員として活躍していた。水産では人事部が5年ローテーション制というルールを発しており、管理職未満の職位のものは5年を目安に他の部署に移ることを促していた。もっとも管理職ともなれば5年未満のスパンで目まぐるしく異動することになるのだが、浩志はその流れで広報部に移った。



 広報部での彼の役割は企業イメージの向上であったが、彼はそれを従業員満足度と相関させようと試みていた。決して背伸びすることなく、従業員が実感しているのと同程度の企業イメージをきっちりアピールする。逆に言えば、企業イメージを向上させたければ従業員満足度を向上させなければならない。そんな仕掛けづくりをしたいと思っていた。彼のそういった考えは、組合役員時代に幸太郎との夜遅くまでの激論によって醸成されたものだった。



そんな中、イメージガールを起用しようという話が持ち上がり、浩志がそれを担当することになった。浩志は自前の考えを実践するにあたり、ほとんど無名ながらクリーンなイメージの女性モデルを探して起用したいと考えていた。水産会社というのは海産物を取り扱うという特性上、部門によってはかなり泥臭いところがある。これまではなんとか根性論でやりくりできてはいたが、今や日本の経済は成熟しきっている。そのような感覚では良い人材がまるで集まらないし、社内の雰囲気もかなり悪くなってきている。おまけに昨今のグローバル化だ。高度経済成長期までの日本の働き方がまるで通じない。現地法人で一年以上働いてくれる現地人は稀で、駐在の日本人スタッフが夜遅くまで働き続けるという状況だ。



今の時代、「儲け=価値の獲得」である。顧客の価値観にどれだけ歩み寄れるかが重要なポイントだ。このような劣悪な条件で働く従業員達が、顧客から価値を見出してもらえる製品・サービスを提供できるとはとても思えない。今はまだ新市場への進出効果で業績は伸びているが、主な市場への進出が完了した後、破綻するのは目に見えていた。ではどうするべきか。まずは経営トップから末端従業員までの意識改革が必要だ。適切な働き方、人との接し方、環境保護の考え方など、これまでの水産が苦手としてきた人権に関する風土の醸成を進めていかねばならない。残念ながらこれが水産の現状だ。ゼロからのスタート、そんな気持ちで共に価値を共創できるような女性モデルを起用したい。



この浩志の思いに広報部の上司連中は概ね賛同してくれていた。上司から人事部と付き合いのある広告代理店を紹介され、このプランを相談したところ、広島支店で最近使いだしたモデルに浩志のイメージどおりの女性がいるという。それが後に水愛のイメージガールに起用されることになるyumiだった。そんなことになるとは思わず、幸太郎と浩志は話しを続けていた。

「でも最終的に保留になったんだっけな、その話。何か不都合でもあったのか?」
 冷めそうなコーヒーを飲むよう促しながら幸太郎は聞いた。
「法務部の協議者コメントがブレーキになったんです。そのモデルさんは海外だと子供に見えてしまうかもしれず、子供を就労させているイメージを持たれかねないと。」



あくまで可能性としてありうるという話しで、最終的には広報部の判断に任せるというコメントだったが、わざわざ危ない橋を渡ることもない。他にもまだ広報部が掴みきれていないリスクがあるかもしれないということで、イメージガールの件は一旦保留となった。
「かなり落ち込みましたよ。今も落ち込んでるんですけどね。そんなこと法務部から言われる前に広報部こそが把握しておくべき内容でしょ?」
浩志の視線はコーヒーの液面を見つめたまま、しばらく上がることはなかった。
「それにしても、法務部も随分キッチリしてるんだな。担当者は誰だったんだ?」
「山本さんですよ、佐々さんと同期の。」
幸太郎は思わず口に入れたコーヒーを吹きそうになった。あの歩く六法全書の異名を持つ山本が?



「あいつ、そういう方面に気がきく人物だったか?」
「少し前にイギリスに語学留学に出てたらしいんですよ、会社派遣の。期間が短いこともあって英語の方はそんなに上達しなかったらしいんですが、ビジネス英語のクラスだったんで、欧州のエグゼクティブが最低限身につけている人権に関する感覚をみっちり仕込まれたらしいんです。」



 浩志が山本から聞いたところによると、欧州のエグゼクティブは人権を蔑ろにすると、どういうしっぺ返しがくるか、彼らの歴史からよく学んでいるという。英国のマグナカルタから始まり、アメリカ独立戦争、フランス革命、ロシア革命など、人権侵害を発端とする数多の事件を彼らは経験してきた。日本は大戦後の外的要因を経て一応は民主主義国家ということになっているが、労働環境や待遇の劣悪さ等を見ればまだまだ欧州のレベルには至っていないという。




「サイラスシリンダーをご存知ですか?」
 キュロスシリンダーとも呼ばれるそれは、円筒状の粘土板に書かれたた現存する中では世界最古の人権宣言と言われている。紀元前538年頃にキュロス王がバビロンに入城した時、バビロンの民衆の人権(信仰、財産)を保証すると高々に宣言したものだと言う。



「山本さんは2500年以上前にそのような概念が根付いていた点に注意するべきだと言ってました。つまり、人権というのは人類が普遍的に希求するものなんだと。僕らのお客さん達がそれを求めているんだと。これをおろそかにしてはいけないと。」
幸太郎はただただ圧倒されて、耳を傾けることしかできないでいる自分に気がついた。



「驚きましたよ。佐々さん達と組合事務所で延々と議論して、なんとなくぼんやりと掴みかけていた感覚を、僅か2,3ヶ月で学んでこられたんですから。しかもそれらがビジネス英語の教材になるほどに体系化されてるって言うんです。」

幸太郎も思わず唸った。法務部員の彼にそうのような教育を施している点も注目すべきポイントだ。それに、その語学留学は毎年10〜20人ほど派遣されていたはずだ。もし10年続くと100〜200人という結構な勢力になる。受講者らは現在はまだ幹部候補生といったところだが、10年後になれば幹部層のど真ん中を担う者も少なくないだろう。そうなれば水産も変わってくる。一方、幸太郎と法務部の山本とは同期であるし、水産での職位もそんなに差があるわけではなかったが、幸太郎が水産から受ける研修は関連会社の社長や事業部門長向けのものになっており、毛色がかなり違ってきている。こういうポツンと取り残されたポジションが労使間の摩擦といった点において実に危うい。組合活動を経てそれを熟知していた彼は、こういった分野の情報収集にも勤しまねばと気を引き締めた。



「それにしても、あの語学研修はどの筋の企画なんだろうな。」
まだまだ泥臭い水産会社の一つだ。このような企画を通し、数年間続けているからには、大物が噛んでいるのだろう。
「さあ・・・人事部が絡んでいることは確かなんですが。僕も詳しくは知りません。最近の人事部はダイバーシティ度向上のためにコンサル入れたりして、働きやすい制度作りに力を入れてたりして、とにかく凄いですよ。むしろ組合の要求事項より人事部が組んだ会社側の提案の方が洗練されてて、組合執行部は恥をかきっ放しな状況がここんとこ続いてますね。」



幸太郎が何を気にしているのか、長い付き合いの浩志には大凡の予想はついていた。
「社長、会長のラインだろうな。」
数年前、まだ若くして水産の社長に就いた市谷の顔をまず思い浮かべながら、幸太郎はそう呟いた。市谷は海外赴任が長く、とにかくスマートという言葉がよく似合うタイプで、社長就任以来、口酸っぱく海外展開の重要性や新業態への進出を説き続けていた。また働き方改革という言葉が社内で出始めたのもこの頃だ。幸太郎が水愛を立ち上げられたのも、市谷体制があってこそだっただろう。



一方、前社長で現会長の天野は絵に描いたような水産会社叩き上げの人間であった。『マッチョ派の最後の砦』のようなことを自ら口にして、昔ながらの気質の者達の支持を得てはいるが、実のところそうではないと幸太郎は見ていた。そもそも市谷を後継に指名したのは天野だ。天野は次の時代のあり姿をよく心得ていたと見える。これまでの泥臭いやり方では限界がある。海外の現地人はおろか日本の若者にすらソッポを向かれ、やがて消費者も離れていくだろう。そこで自分が持っていないモノを有する市谷を後継に指名し、会社の将来を託したのだろう。



ただ、市谷はあまりにもこれまでの水産の気質と違っている。社内が騒然とし、結束も無くなってしまうことは明らかだ。そこで、天野は会長として古参の重役達をどなり散らしながら、マッチョ派にしかできない泥臭い仕事の集大成に掛かった。古参の幹部らに花を持たせつつ、自らが会長を勇退する際に、一緒に引退させるつもりだろう。その後は市谷とその後継者達による新しい時代。天野の頭の中ではそういった絵が描かれているに違いない。組合役員として当時社長であった天野と対峙してきた幸太郎にはそう見えていた。水産も間もなく大きく変わると確信した。自分も遅れを取ってはいけない。そういった意味でも、このボトル水のプロジェクトは重要だ。

「岡部がそういった方面で辛酸を舐めていたとは知らなかったよ。今度のうちの話はな、そういった方面に敏感な人達がお客さんになると思う。俺は岡部に声を掛けて良かったと思うよ。」
浩史は複雑な表情を浮かべながらも微笑で礼を表した。

 ようやく二人は本題に入った。どうやって大量のボトル水を捌くか、だ。「基本は金田の水と同じですからね。彼らが直に通販をやっている以上、水愛も通販だけというのは厳しいでしょうね。」
 幸太郎は深く頷いた。それは分かっている。広島県内ならまだしも、中国地方全体となると今の水愛は全く販路が無い。始める前から手詰まりだった。
 「販路拡大のため、販売代理店を広く募集するという手もあります。町の小規模店舗向けですね。最近では健康志向のショップやレストランが増えてますし、彼らはインターネット販売も活発に手掛ける傾向にありますから、自然とネットでの地名度も上がってくると思います。」



正直なところ幸太郎にはさっぱり実感が沸かない話だった。他力本願過ぎるような気がしたし、如何わしい代理店が現れたらイメージダウンを免れないのではないか。

「今の水愛の体力で、全てを一手に担うのは不可能です。こういった場合、オールスター作戦、つまり分業で攻めていく必要があるのです。」



次第に口調に熱を帯びてきた浩志だったが、幸太郎の心境は反比例的に沈むばかりだった。ディスカッションの繋ぎ方が苦しくなってきた幸太郎は、ひとまず分業というところにスポットを当ててみることにした。

「分業か。なるほどね。では水愛は何を担うべきだろう?」
「広告と物流です。」

 幸いなことに「金田の水」のイメージは田舎臭い。水愛は健康志向の女性に訴求できるようなイメージ戦略を取るべきだ、と浩志は語った。

「佐々さん、テレビCMを打ちましょう。」
この一言に幸太郎は大きく仰け反った。これまでの重苦しい胸の内が吹き飛んでしまった。
「な、なんだって?」
もちろん全国区というわけではないが、県内だけというのも最低ロット数からすると狭すぎる。中国地方へのテレビCMを打つ。そしてそれを動画共有サイトにアップロードし、全国の代理店が自由にシェアできるようにする、と浩志は力を込めた。



幸太郎はさっきとは逆に平静さを取り戻すため、浩志のもう一つのキーワード、物流にフォーカスすることにした。たしかにあれだけの数のボトル水を捌くためには物流も大きな課題だ。

「佐々さん、実は水産でも災害時の飲食料の備蓄に関するプロジェクトを勧めています。他社に横取りされないよう、新聞発表はまだ控えていますが、自治体との間で災害時の非常食備蓄協定の締結と運用を進めているところです。自治体が倉庫を確保し、水産がそこに缶詰を納めるんです。さらに平時は水産が物流センターとして使用し、在庫量は倉庫のキャパ70%以上をキープするように運用します。ただし、当地で災害が起きた場合は配送をストップし、非常食の配給に切り替えるという仕組みです。水産にとっては物流センターの土地と建屋が無償で使えるというメリットがあり、自治体には非常食の賞味期限切れの問題の解決や、物流センターの雇用というメリットが生まれます。もちろん災害時の備蓄用ですからパックご飯やボトル水も入ってますが、ご存知のとおり水産はこれらの自社品を持ってませんから、商流的にあまり好ましくない状況です。水愛がボトル水を自社ブランドとして取り扱い始めると、相性がとても良いと思いますね。広島でもちょうど話が進んでいるところだと聞いてます。」



幸太郎はカッと目を見開いた。こいつは今日何回俺を唸らせるんだ!
未だに販売代理店の素性のリスクが気にかかってはいたものの、これだけの話が目の前にぶら下がっていて攻めない手はない。

広告だ、ターゲット顧客層の心を掴む広告さえ当てれば、このプロジェクトは成功だ。

幸太郎はカッと見開いたままの目を浩志の視線に重ねた。数秒は経っただろうか。それは男同士の握手の代わりだった。

 水愛のプロパー達を紹介しつつ、夜は久々に飲み明かそうと考えていた幸太郎だが、浩志はあいにく夕方までに本社に戻らねばならないという。
「佐々さん、なるべく早くこちらに身を移したいですが、すぐにというわけにはいかないと思います。僕が来た後もキーパーソンが佐々さんと僕だけというのは厳しいです。プロパーさん達の中から幾人か選抜しておいて欲しいです。」

 幸太郎は力強く頷いた。水愛もようやくそういう時期に来ている。良い人材も育ちつつある。

 幸太郎は浩志の背中を見送りつつ、「あいつも春から管理職だな。」と呟いた。



第4話に続く

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありませんが、今後の連載の参考となりそうな情報がございましたらお寄せ頂けると幸いです。

連絡先
https://twitter.com/4_Sea_




強力粉とスキムミルク無しで「薄力粉と冷ご飯のパン」を焼いてみた
薄力粉 200 g
砂糖 16 g
塩 6 g
オリーブオイル 20 g
牛乳 50 g
ドライイースト 3g
水 95 g
ご飯 150g






てことでパンも焼きたいなと思っていたところ、冷蔵庫から中国製の業務用ドライイーストが出てきた。
だいぶ前に買ったところ、ホームベーカリー・ゴパンの羽根が無くなってることに気づき、
未開封のまま冷蔵庫に放置されてたのでした。
んで、賞味期限は3ヶ月超えてる。
ネットで調べたところ未開封なら少々超えてても問題無いみたいで、
開封後は冷凍しとけばまあ大丈夫だろうとのこと。

よし、使おう。

ところが、強力粉が無い。

それにスキムミルクも無い。
これまたOKフード的には厳しい商品で、なるべく使いたくない。




で、いろいろ調べてると、冷ご飯と薄力粉でパンが焼けるらしいとのことで
強力粉の方はこれで解決。

スキムミルクは牛乳で代用することに。
牛乳の固形分が約10%として、その分の水を減らす。

バターは贅沢な気がしたのでオリーブオイルにして、その分、塩を多めに。

レシピをまとめると↓のようになります。

薄力粉 200 g
砂糖 16 g
塩 6 g
オリーブオイル 20 g
牛乳 50 g
ドライイースト 3g
水 95 g
ご飯 150g


予約モードで朝に焼き上がるようにセットして、ドキドキしながら寝ました。

そして迎えた朝。





もうちょっとふっくらして欲しかったけど、お米パンならこんなもんかな?

食べてみると、結構いける。
もっちりした感じ。
あと、オリーブの風味が強いのと、塩が多めのせいか、何もつけずにそのまま食べれてしまう。
オリーブオイルと塩は次回もう少し減らしても良いかもしれない。

好評だったので、また作ります。
基本、計量するだけで楽ちんですしね〜。

あとサクっとした食感も楽しんでみたいので、強力粉も探さないと。

うちのホームベーカリーは米パンがやけるゴパンですけど、
冷ご飯を使う場合は普通のHBでも大丈夫です。
実際。今回は普通の食パンモードで焼きました。

米パンも何度か試したことありますけど、焼き上がりが難しいですね。
カチンカチンになりました。
(ただ、当時は家庭用のドライイーストを使ってて、そのせいかもしれないです。)
あと米だけで焼けるわけじゃないみたいで、米粉も必要で、これがまた入手が難儀でした。










連続小説『水愛』(スイート)第2 話~時来たり~




002 時来たり

 水産会社の企業内ベンチャー企画から独立し株式会社水愛(スイート)を立ち上げて数年が経った頃、佐々幸太郎にとって衝撃的な出来事が起こる。東日本大震災だ。



 広島で自販機による飲料販売を手掛けていたに過ぎない水愛でさえも、印象に残る影響があった。震災後しばらくの間、ミネラルウォーターの在庫が急激に捌け、一方で入荷が止まってしまったのだった。水愛の在庫が捌けた理由は近所の方々が東日本の知人に送ったからというのは容易に想像が付く。事故当時は東京の水道水から甲状腺がんを引き起こすとされるヨウ素131なる放射性物質が検出され、乳幼児が摂取するに不適であるとの報道がなされた。



水愛の従業員も就業後にディスカウントストアやコンビニエンスストアを駆け回り、小さなお子さんがいる東京方面の友人に発送するという日々を数週間続けていた。飲料販売を手掛けている会社に勤めていることが知れているだけに、頼まれることが多いようであった。幸太郎もそんな状況下、できるだけの努力はした。しかし、水を入手することはできなかった。悔しく情けない思いをした。何のために企業人になったのか。こんな時に人助けができなくてどうする、と。



 幸太郎がそのような状況に置かれる中、まるで正反対のことをしてのけた男が居た。衛生用品や健康食品の通信販売を中心に業績を伸ばしていたヘルシードットコムの加藤だ。社長の加藤はただ一言「通信販売業は今や災害時の重要なインフラである。」と宣言するやいなや、大量のボトル水を自身の通販サイトに投下、多くのユーザーの満足と支持を得ると共に業界を震撼させた。その離れ業の裏には日頃からの物流の安定化に向けた取り組みが大きかったという。ベンダーとのコネクションは当然として、自社の倉庫・配送センターの拡充にも努めていた。ちょうど震災の少し前に九州の大規模倉庫が完成したばかりで、これが他の通販業者との決定的な違いとなった。この物流体制を目の当たりにした通販ポータルサイト大手のlackanが、配送業務をヘルシードットコムに委託してしまったほど、加藤のそれは強力だった。幸太郎にはあと何年掛かっても追いつけないことのように感じた。



 しかし、幸太郎はそこで挫けるような人物ではなかった。彼の会社は広島への恩返しという御旗がある。広島に有事が発生した際、せめて広島にだけでも貢献できるよう、幸太郎の挑戦が始まった。取り扱うべき商品はやはり水であろう。そのことは東日本大震災の時に体験済みである。次に水のベンダーの確保だ。有事の際の供給安定性を考えると、なるべく近いことが望ましい。目を付けたのは県境の山中で採水されている天然アルカリ水だ。これは数百メートルもの深さから汲み上げた地下水で、天然の濾過材である花崗岩で既に濾過されていることから加熱殺菌を必要とせず、水の美味しさを損なわずにボトリングできることが特徴で、近年通販で話題の商品となっている。2013年の秋、水愛立ち上げ時からの事業群が落ち着いてきたと判断するや、幸太郎は県境の地、金田に向かい、採水業者であるKNT株式会社の担当者と面談することにした。



 幸太郎は県境の社用車のマツダ・アテンザを自ら駆り、県境の山中へと赴いた。この車は社長が乗る車としては少々廉価ではあるが、水愛の規模からすれば適切な選択であったし、取引先への嫌味も無く、マツダのフラッグシップモデルなだけに貧相な感じもしない。なにより地元で製造される車であるし、幸太郎自身が最近のマツダ車の乗り味を楽しんでいた。2000年代初頭の同社製の車は腰高感があって、このような山坂道を走っているとドライバーが予測する車の挙動と実際の挙動が一致せず違和感があったものだが、今やまるで別次元だ。不快なロールはまるでなく、全体的にコーナリング性能が上がった。むしろ不自然なくらい鼻先が道なりに向こうとして驚かされる場面がある。横滑り防止装置が効いているのだろうか、タイヤが鳴くといったこともほとんど無い。

「真面目、だよな。良い仕事をしているよ。」
ハンドルを握りながらポツリと幸太郎は呟いた。この歳になると良い音楽を聴いていてもそう感じることがある。クオリティーから緻密な追い込み度合いを推し量れるようになってきた。そして自分もまた負けていられない、そう思いながら良い刺激を受けるのだった。そんなことを考えつつ元来運転好きな幸太郎にとっては何の苦もなく県境の採水業者、KNTに到着した。


 KNTの本社は同社の工場と同じ敷地内にあった。山間に現れた真新しく巨大な建物は簡素な鉄骨造りではあるが異様な存在感があった。県道から敷地に向けてスロープを上がったところに駐車場があった。来客者も従業員もここに駐車し、徒歩で正門を通る。車をパスさせるよりは遥かに保安上の問題が少ないであろう。



幸太郎がまだ水産で勤務していた頃、労働組合のイベントでタイヤメーカーの工場を見学したことがある。その工場は従業員の通勤車両が正門の中にあったわけだが、退勤の際のチェックがかなり煩雑であった。通勤車両が退出する度に保安員が後部座席とトランクルームあるいはハッチを開け、持ち出し物、つまり開発品や製品のタイヤ等が積まれていないかチェックするのであった。幸太郎が務める水産のほとんどの工場では駐車場が正門の外にあって、そのような煩雑さは無かった。そこは文化の違いなのだろう。タイヤメーカーと水産会社では車に対する思い入れが違う。車上荒らしや盗難対策としては正門の中に駐車場がある方が良い。その点、KNTのような山間部では車上荒らしも起きにくいだろうし、正門の外の駐車場で全く問題無いだろう。
 


 正門にてアポイントの内容を伝え、記帳を済ませた幸太郎は応接室に通された。通された応接室はシンプルだった。壁に飾られているのは画家の作品ではなく工場の鳥瞰図だ。本社兼工場というのはどこもこういった感じであるし、悪い気はしない。ほどなくして見るからに狡猾そうな50代半ばと思しき男性が現れた。体格は決して大柄ではないが、胸板をせり出しながら相手に迫るかのような威圧感があった。



堂本と名乗るその名刺には取締役営業本部長とあった。小さな会社によくありがちな節税対策と思われる。経営者兼使用人ということになり、営業本部長として違和感の無い給料分については経費と見なすことができる。実のところ幸太郎も社長兼企画部長であった。



 「佐々社長、本日は遠路はるばる社長様自らご足労頂きましてありがとうございます。本来であれば弊社の社長も同席するべきところ、大変失礼致します。」
 幸太郎は今や地元ではちょっとした有名人だ。そのような人物に来社され光栄だといった一通りのお世辞が終わった後、幸太郎は有事の際にボトル水を広島に提供できる体制を整えるべく商流を開きたいと要件を切り出した。地元の採水業者だ、乗ってくれるだろうと思っていた。ところが、幸太郎が話している間、堂本の表情に特段の変化は無く、しかも彼の次の発言ときたら幸太郎の話に乗るでもなく乗らないでもなく予想外のものであった。
 「佐々社長からそのようなお話を頂きまして大変恐縮です。最初に一点だけ申し上げておくべきことがございます。私共の天然水の商流は2種類ございます。一つは佐々社長がイメージされている私共の『金田の水』ですね。こちらは先日の第二工場稼働のタイミングで私共の通販サイトでの直販限定となりました。」
「ええっ?」



幸太郎は目の前が一瞬暗くなったように感じた。その反応を認めながらも構わず堂本は続けた。
「もう一つはOEMになります。もしかするとご存知かもしれませんが、大手のコンビニさんやスーパーさんのPBで天然アルカリ水がありますでしょう。あれらの多くが実は弊社の製品なんです。」



それを聞いた幸太郎はまたもや出遅れたかと思ったが、なんとか持ちこたえて話しを繋いだ。
「そうしますと、うちにもOEMという形で供給頂ける可能性があると?」
明らかに戸惑いの表情を見せる幸太郎を見た堂本は、自分の表情が嫌味ったらしく変化しそうなのを自覚し、次の伝えるべき要点へと話しを移した。
「今回の能力増強にて供給量には今のところ十分な余裕があります。しかしOEM供給となりますとラベルや輸送箱といったパッケージや物流の整備などを個別に実施することになりますので、年間最小ロットを設定させて頂いております。」
幸太郎は堂本の顔に少し嫌味さが表れてきたように感じ、所詮は田舎の会社なのだなという印象を持ち始めていたが、他に水のあてがあるわけでもなく渋々話しを繋いだ。
「大凡どれくらいの量と単価になるのでしょう?」
堂本は待ってましたとばかりの表情を一瞬見せたものの、わざとらしく声を潜めた。
「佐々社長、これは他言無用でお願いします。私共、普段はめったなことではOEMの話しを出すものではございません。他ならぬ佐々社長だからこそでございます。」
もったいっぶった手つきで電卓を取り出し長々とボタンを叩いた堂本は、自分と幸太郎しか居ない応接室にも関わらず電卓の画面を傍から覗かれないよう手で隠しつつ、恭しく幸太郎に見えるよう差し出してきた。その桁数をようやく確認した幸太郎は唸った。
「うーん・・・、これでは毎月が有事ですね・・・。」



黙ったまま恐縮した面持ちで深々と頭を下げた堂本だが、いよいよ彼の最終カードが切られようとしていた。
「最小ロットについては弊社の勝手な都合でございまして誠に恐縮でございます。折角でございますので2つめのご質問の単価も示したいと思いますが―――」
またしても電卓を叩いた堂本だが、今度はやけに早い。さっと幸太郎に画面を見せる。幸太郎は大きく仰け反ってしまった。
「なんと!こんなにお安いのですか!?」
そこには直販の「金田の水」の販売価格からは想像もつかないほど安価だ。こんな値段でKNTは採算が取れるのだろうか。アメリカ資本のホールセール店に行けば驚くほど安いボトル水が確かに売られてはいるし、卸価格から原価を推定すると堂本が提示した単価も不可能な数字では無いのかもしれない。ただ、ホールセール店の安価なボトル水は原水が現地の水道水だ。KNTの水は天然水ではないか。堂本は目を白黒させる幸太郎の反応を見るのを楽しみながら更に畳み掛けに入ろうとしていた。



「佐々社長、折角ですので弊社の新しい第二工場を見学なされませんか?おそらく弊社のホームページにアップしております動画もご覧頂いているかと存じますが、是非とも実際の様子をご覧頂きたいのです。」
未だに提示価格の衝撃から立ち直れない幸太郎であったが、堂本の後に付いて工場へと向かった。



まずは工場のエントランスロビーに置かれた大型ディスプレイを使いつつ堂本は饒舌に彼らの天然水の素晴らしさを説明した。説明によれば、地下数百mの辺りに花崗岩帯が存在していることが最大の利点であるとのことだった。地表に降り注いだ雨水はこの花崗岩によって数百年もかけて濾過されているとの説があるらしい。濾過されている間に不純物や微生物が除去されていくため、ここの天然水の品質は原水の時点でかなり品質が高いものになっており、ボトリング前の加熱殺菌が不要であることから風味が損なわれることがない。



「花崗岩というのは不純物を取り除いてくれるだけではございませんでして、適度なミネラルを地下水にもたらしてくれるんです。これが水の美味しさに繋がるわけです。一般的に花崗岩で濾過された水というのは商品価値を高く認められておりまして、それに纏わる事件が発生する場合もあります。」
堂本によれば、ある神戸界隈の地名を冠した天然水を販売していた大手の飲料会社が、同市内の別の採水地を追加し、同じ銘柄で販売していたたところ、新しい方の採水地には花崗岩帯が存在せず、同じ銘柄で売るべきではないとして排除命令を受けたことがあるという。人気の花崗岩濾過水の中でも、この金田の水は世界トップレベルの高品質だと彼は胸を張った。



次に幸太郎は精製工程に案内される。散々花崗岩濾過の話しを聞かされた後で精製工程を案内されるというのは妙な感じがした。それを読み取ったのか、堂本が説明を再開する。
「花崗岩で濾過されているとか、加熱滅菌が不要と言いましても、地酒の酒蔵のような感覚ではこのご時世やっていけませんでしてね。ボトリングの直前に高性能フィルターを通して最終の異物除去、菌体除去をしております。工場建設時のメインコントラクターによりますと、他の採水工場に比べるとうちの精製工程は物凄く小ぶりだということです。元々の水質に助けられているのですよ。設備費の減価償却が終わったり稼働率が高くなったりすれば固定費が下がりますから、うまく回れば水道水を精製してボトリングするより原価を抑えられる可能性もあるのです。これが先程示しました価格のカラクリです。あの価格でご提供するためには私共も稼働率を上げねばなりません。そこで年間最小ロット契約をお願いしている次第なのです。」



次にボトリング工程に向かった幸太郎は、完全に機械化・無人化された最新鋭の設備の様子に圧倒された。清浄な環境で目にも止まらぬ速さで水が次々にボトリングされていく。水愛の親会社の水産の工場でもここまで素晴らしい工程があるだろうか。
「この区画はクリーンルームになってまして見学の方には入室頂くことができませんので、このようにガラス張りにして見学し易いようにしております。もっともメインコントラクターによれば、うちの最大の見せ場は先程の簡素な精製工程だと言っていますがね。あのような簡素な精製設備でこれだけの品質のボトル水が得られるのは業界を震撼させる事態だということです。一般の方にはそれでは面白くありませんので、見学コースとしてはここが一番の見せ場ということになります。」



最後に案内された部屋は試験室であった。ここでは簡易試験の体験ができるという。ゲスト用の机にはここの天然水「金田の水」と他社のボトル水の合計5本が用意されていた。
「他社さんの水の銘柄は伏せておりますが・・・・」と言いつつ堂本は銘柄名を小声で幸太郎に耳打ちした。どれもよく知られたミネラルウォーターだ。今からゲストである幸太郎に硝酸態窒素の簡易試験の体験をやってもらうとのことであった。硝酸態窒素は近頃健康への影響が取り沙汰されている物質で、体内で発がん性を示す物質に変化するかもしれないという説もあるという。硝酸態窒素は肥料や屎尿が由来で、近年これらが地下水に混入するという問題が飲用水関係者を悩ませている。



「ここの水の採水ポイントはかなり深いですから、硝酸態窒素の心配もありません。今から佐々社長ご自身に簡易検査をして頂き、実際に体験頂きたいと思います。」
帽子とマスクのせいで目元しか見えないにも関わらず、とんでもない美人であることを隠しきれない検査員がゲスト用の机にやってきた。彼女から指示されるままに、幸太郎は硝酸態窒素簡易検査パックを取り出し封を切り、「金田の水」にパックの先を漬けた。すると少量の試料水がパック内に入った。これを「金田の水」のボトルの前に起き、他社品についてもそれぞれ同様の操作を実施した。時間が経つにつれ、他社品の水の入ったパックはピンク色に着色してきた。「金田の水」は無色透明を保っていた。検査員はその美しい声で色見本と色の濃さを比べることで、簡易的ではあるが大凡の水中の硝酸態窒素の濃度が分かること、色が濃ければ濃いほどその濃度も濃いこと、「金田の水」のように試験液が無色であればほとんど硝酸態窒素の汚染は無いことを説明した。結果が一目瞭然で分かるこの検査体験も幸太郎に強い印象を与えた。

見学が終わって応接室に戻る頃、堂本は幸太郎がそう遠くない未来に顧客になるであろうとの手応えを掴んでいた。
「私共の天然水はほとんど手を加えずとも高品質で、それ故に工場の稼働率を高くキープさえすれば人々に健康維持のベネフィットをリーズナブルに提供することができます。佐々社長、御社も是非私共の輪に入って頂ければと思っております。」



 帰りの車内で幸太郎は悩んでいた。広島の有事の際に十分な飲料水を提供できるだけの体制を構築したいとう当初の彼の思い、KNTの天然水の品質の高さ、とんでもなく安い単価、消費者の健康維持、そして年間最小契約ロットの問題・・・それらはベッドに入った後も彼の頭を離れないでいた。水愛のような小さな会社で莫大な年間最小契約ロットをどう捌くか、そこだけが、いやそれこそが問題であった。しかし彼の腹は既に決まっていた。
「よし、水産の力を貸してもらおう。」
水愛の従業員はほとんどが地元出身のプロパーだ。重要事項は幸太郎が自ら取り仕切ってきたが、今回のチャレンジは話が大きくなる。親会社から何らかの形で助っ人を貸してもらいたいと考えていた。つまり、幸太郎は彼の会社の規模からすると無謀なほど大量のミネラルウォーターを販売する決意を固めたのであった。

第3話に続く

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありませんが、今後の連載の参考となりそうな情報がございましたらお寄せ頂けると幸いです。

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連続小説『水愛』(スイート)第一話~芽吹き~
001 芽吹き

「一応、うちも会社ですからね。」
 窓越しに見えるほぼ満開の桜を視界の端で意識しつつ、照れくさそうに社長の佐々幸太郎は笑った。経歴からして40代半ばのはずだが、スポーツマン風の短髪と長身から繰り出される艶のある太い声のせいかまだ若く見える。大手水産会社の社員だった幸太郎は、企業内ベンチャー企画に手を挙げて西暦2009年に株式会社 水愛(スイート)を設立。親会社発祥の地への恩返しを旗印に、市民の生活に密着したビジネスを展開してきた。



「私も気合を入れたい案件なだけに年度予算として組んでおこうと思って、春を待つことになったんです。水愛のメンバーは賛同してくれてますが、あまり好き勝手すると水産から目を付けられますからねぇ。」
 水愛の事業内容は自販機の設置や九州地方の人気喫茶店チェーンのフランチャイズといった一見地味なものばかりだが、幸いなことに水産会社の中では目新しい取り組みで、充分なインパクトがあった。また、発症の地への恩返しという趣旨から、高齢者が多い地区に敢えて自販機を置いたり喫茶店を開店したりしているのだが、これが予想外の好業績を生んでいる。某バーガーショップの成功例を参考に地元のシニア層を積極的に採用していることもあり、地元の満足度も良好。滑り出しは上々といえる。


「ということになりますと、やはり出演者は地元出身が宜しいでしょうか?」
「できれば、そうですね。良い方いらっしゃいますかね?」
 この会話の流れだと60代を紹介されるのではないかと身構えた幸太郎だったが、そこは杞憂に終わったようだ。

「広島を拠点としたモデルさんの紹介会社がありますので、そちらに当たってみます。例えば・・・」



 広告代理店の営業部員である宮原薫はAラインのスカートから伸びる白い脚と耳にかけた髪を崩すことなく、足元のトートバッグに手を伸ばした。



 いたってスムーズな嫌味の無い仕草で愛用のクロームノートを開く。これはノートパソコンにして数秒で起動する優れもので薫の必須アイテムだ。これはグーグルクロームというウェブブラウザ上で全てのオペレーションが行われているのが特徴で、それ故にハードウェアのスペックの割に動作が極めて速く、バッテリーの持ちも良い。そして低価格である。日本ではまだそう見かけない代物だが、米国のラップトップパソコンのOSでは既にシェアトップとなっている。



「例えばこのモデルさんは市内の方です。私も何度か一緒に仕事をしています。」
 画面には清楚で健康的で自然な雰囲気を漂わしながらも、やや遠慮がちなYumiの笑顔が映っていた。年齢は20代前半といったところだろうか。

「驚きましたね・・・。この方、今回のイメージにぴったりです。もしかすると、この近くのレストランウェディングのイメージガールの方ですかね?」
 メイクで随分印象が変わるもんだなと内心思いつつも、幸太郎の腹は決まっていた。

「よくご存知で。ただ・・・」
 薫のうっすらと淡く彩られた唇は次の言葉を一旦は言い澱みつつも、最近起きた予想外の出来事を重々しく口にした。



「とある大企業のイメージガールにほぼ決まりかけていたんです。Yumiさんの人柄はその企業が長くお付き合いしたい消費者像そのものだと広報の方が推してくださって。」
 幸太郎の目が一瞬鋭く光った。

「ところが、法務室から待ったが掛かったんです。Yumiさんは海外だと子供に見えてしまうのではないか、と。子供を広告塔に使うことを良しとしない国もあるとのことでして・・・。」



 幸太郎は思わず吹き出してしまった。
「あっはっはっ!それってうちの水産の話でしょ?両方とも誰の発言か大体分かりますよ。そりゃあ残念でしたねぇ。今度会った時に言っときますよ。」
 薫は気づいて欲しかったような欲しくなかったような複雑な表情を見せながらも、おそるおそる聞いてみた。

「水愛さんでは大丈夫でしょうか?」
 幸太郎は自分の悪戯っぽい性格を素直にさらけ出せるこの相手の存在が有難かった。それでなくともこの界隈の広告代理店の営業員ときたら、何を勘違いしているのかツンとした態度で上から目線で接してくる者や、逆にヘラヘラした態度で馴々しい者がいたり、挙げ句の果てには帯同するカメラマンにその辺りのフォローをされる始末だ。そんな中で薫はクライアントと一定の距離感を保ちつつも、嫌味のない立ち居振る舞いと、誠実で親しみやすい性格から固定客を掴みつつあった。

「宮原さん、それ嫌味ですか?うちはせいぜい県内で手一杯なのに、海外の心配だななんて。いやぁ、参ったなぁ。」

 そうは言いつつも、諸事情あって今回は県内に留まる話ではない。中国地方全域に向けたテレビCMである。幸太郎にとっても薫にとっても大きな勝負であった。そして、その勝負に無名の地元モデルのYumiが抜擢されようとしていた。

 Yumiは地元の大学の生活環境系の学科を卒業したものの、折からの不況で就職活動が思うように進んでおらず、専攻とはまるで関係のないギフトショップを展開する会社に就職した。



 広島市内のギフトショップに配属されたものの従業員で正社員はYumiを含めて3名。処理しなければならない山のようなオーダーと毎日闘い、深夜1時にスクーターで帰宅する日々が続いた。



ある夜、Yumiは自宅のガレージにスクーターを乗り上げる際、アクセルを開けすぎて雨戸に接触してしまった。幸い怪我もなく、雨戸にへこみができてスクーターの樹脂パーツが破損した程度で済んだのだが、夜中にしては派手な音が近所に鳴り響いてしまった。前々からYumiの超過労働に不満を表していた父の堪忍袋の緒が切れ、入社10ヶ月で退職となった。退職後は細々とアルバイトをしながら生活をしていた。



 ある日、Yumiは父の勤める職場に案内があったという商工会主催の街中ウォーキングイベントに参加させられた。平たく言えば商店街の活性化を狙った食べ歩きと婚活パーティーを兼ね合わせたような、どうにも発想が田舎臭いイベントだった。



 そのイベントの広報を担当していたのが薫だ。薫は次回のパーティーの広報用に写真を撮っていたのだが、ファインダー越しのYumiは明らかに普通の参加者とは違って見えた。Yumiの街を歩く姿、食べ物を口にする時の仕草、他の参加者と談笑する際の佇まい、それらのどれもがイベントの田舎臭さを吹き飛ばすほどのインパクトがあった。



 彼女にはなにかこう惹き付けるものがある、そう思った薫はイベント終了後にYumiに話しかけ、自分がよく利用するモデル紹介業者に登録するよう説得しつつ、半ば強引に手続きを済ませてしまった。それからYumiは市内の企業・商店のちょっとした広告のモデルを幾つか務めるようになった。もちろん、そのほとんどが薫経由のオファーだった。
 



 薫は東京時代のクオリティーを再現できるこのモデルと、その飾りっ気のない人柄を大いに気に入っていた。それ故、前回の水産のイメージガールの件は広島支店としてもかなり大きな話であったし、成功する確信もあっただけに、法務室の待ったが入った時は酷く塞ぎ込んでしまった。そんな薫にYumiが掛けた「私、少しホッとしています。」の言葉とその優しい声音に薫は涙し、必ずやこのモデルと大きな仕事を仕留めてみせると心に誓ったのだった。
 
 そんな薫にとって今回の水愛の件は、水産の時よりは小粒ながらも心が躍る話であった。理由あって中国地方全域に流す予定のテレビCMであるし、何よりあのチャーミングな佐々幸太郎の会社だ。Yumiとの相性も良いに違いない。今回のテレビCMが成功すれば水愛の業績も安定軌道に乗るだろうし、これからの三者の長い付き合いも期待できる。



 やや緊張気味のYumiを連れて幸太郎の社長室に入った薫は、思いもよらぬ彼の真意を聞くことになる。非常に品質の良いミネラルウォーターの販売を開始するとは聞いていたのだが・・・。これは今までの仕事とはどこか違う。彼の艶のある太い声のせいだろうか、なんだか少し胸騒ぎを感じながらも薫は完全に幸太郎のペースに飲まれつつあった。



第二話に続く

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありませんが、今後の連載の参考となりそうな情報がございましたらお寄せ頂けると幸いです。

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